LANケーブル Q&A

今日はパソコン通信で使うLANケーブル(Twisted pair cable、ツイステッドペアケーブル)について載せました。

1)芯線が撚ってあるのはナゼ?
LANケーブルの中を見ると、よじった2本の線が一組になっていて、それが4組入っていますね。なぜそれぞれの対はよじってあるのでしょうか?
それは、電気信号の伝わり方と密接に関係しています。よじった線(「撚り対線」「ツイストペア」といいます)の中を流れる信号は、片方の線の電圧が上がった瞬間にはもう片方の電圧が下がり、次の瞬間にはその逆になる、という変化を高速に繰り返しながら伝わって行きます。このような信号を「差動信号」といいますが、差動信号はそのものがノイズに強い特性を持っています。
また、外から入ってくるノイズに対しては、線をねじる(撚る)ことで、線に発生するノイズ電圧が捻られるたびごとに逆向きになり、結果として受信側ではほとんど出てこないという利点があります。もちろん、ケーブルから発射される電磁波も、この隣り合う「撚り」により逆向きになるので、打ち消しあって弱くなります。同軸ケーブルのように、芯線を通してその外側をシールド線で囲ってしまえばもっとノイズに強くなりますが、構造が複雑になって重量や硬さが増し、コストも高くなります。STPケーブルと呼ばれるのがこのタイプで、工場など大電力機器がガンガンスイッチングされていて、ノイズが多いような場所で用いられます。通常、家庭内で用いられるのはUTPケーブルといって、シールドなしのタイプです(UTP,STPについてはこの後に詳細記述があります)。
このように、信号を差動で送り、かつノイズに強く安価に伝送するためのケーブルとするために、撚り対線を使っているわけです。
なお、よじるピッチは細かいほどノイズに強くなりますが、4組とも同じピッチで撚ると、ケーブル同士がお互いに結合度が上がってしまう(他の撚り線の信号を拾いやすくなる)ので、4組のピッチを微妙に変えてあるようです。

2)長さが足りないのでハンダ付けして繋ぎたいが
LANケーブルに限らず、信号を伝送するケーブルには「特性インピーダンス」と呼ばれる、固有の特性値があります。無線用の同軸ケーブルなら50Ω、テレビ受信用の同軸ケーブルは75Ω、より対線は大体数10Ω〜200Ω程度の値です。(特性インピーダンスは交流で測らなくては値が出ません。ケーブルにテスターを当てて抵抗値を測っても無限大を示すだけです。)
ケーブルをハンダ付けなどで繋いでしまうと、そこだけこのインピーダンスが狂うので、そこまで伝わってきた信号が一部、送信側に戻って(反射)しまいます。このことは、受信側に届く信号が弱まると共に、波形の崩れを引き起こすため、極端に速度が低下したり、通信不能になることがあります。
長さが足りないからといって、ハンダ付けで継ぎ足してはいけません。どうしても継ぎ足したいなら、ケーブル自作用のRJ-45コネクタを買ってきて両側に付け、「中継」コネクタで繋ぐことです。でも、この中継コネクタも、厳密に作られたものでないと、多少の反射は生じます。
 
3)カテゴリ6とカテゴリ5eは何がどう違う?
これらは、規格上、カテゴリ6の方が高周波の信号まで減衰が少なく、かつ漏話が少ないことが定められています。カテゴリ5eが100MHzまでの規定であるのに対して、カテゴリ6は250MHzまでの規定になっており、2.5倍の周波数まで規定されています。
「減衰」というのは、文字通り、信号が伝わっていくにつれて弱くなってしまうことです。100MHzで比べると、カテゴリ6ではカテゴリ5eの2倍程度(減衰が1/2程度)に厳しい規格となっています。
一方、「漏話」というのは元々電話の用語で、送信した信号が他の信号線に混入することです。昔、電話がまだ黒電話で、交換機もデジタル交換機でなかった頃は、どこかよその会話がわずかに聞こえたりしました。LANケーブルでいう漏話には、近端漏話(きんたんろうわ:NEXTともいう)と遠端漏話(えんたんろうわ:FEXTともいう)の2種類の規定があります。
上にも書いたように、ツイストペアが並んでいて一方に送信信号を流すと、他のツイストペアに送信信号が混入します。この「漏れた信号」が自分側のコネクタに現れるのを「近端漏話」、相手方に現れるのが「遠端漏話」です。
信号が、長い距離を弱まりながら伝わってくることを考えると、最も受信信号が弱まっていて、最も送信信号が強い自分の側のコネクタでの漏話、つまり近端漏話が通信可能な限界を決めるといえるでしょう。カテゴリ6ではカテゴリ5eの10倍程度厳しい(漏話が少ない)規格となっています。
では、この厳しい規格を満足するため、どのような構造上の違いがあるのでしょうか? ケーブルでは、減衰を少なくするため、なるべく太い銅の単線が使われています。また、漏話を少なくするために、十字介在を入れてツイストペア同士が近づき過ぎないようにする、ツイストペアの撚りのピッチを微妙に変えて混入を減らす、などの工夫をしています。また、以上はケーブルそのものの工夫ですが、コネクタ部分にも漏話を少なくするために、ハウジング(樹脂の部分)や端子の寸法精度の規格が厳しくなっていたり、かしめ工具もその精度を守れるような作りになっているなど、システムとして規格が満足されるような仕組みになっています。

4)ケーブルはその仕様で何がどう違う?[単線,撚り線][UTP,STP]
まず、「撚り線仕様」と「単線仕様」について。
一本の導線を交流が流れている場合、その周波数が上がるにつれて電流は導体の表面近くにしか流れなくなります。これを「表皮効果」といって、周波数が上がると顕著になるため、速い(周波数が高い)データ転送やマイクロ波以上の無線の世界では、大きな問題となります。導線の中心付近に電流が流れず、表面近くばかりに流れるので、断面積が減ったことになり、抵抗が増すからです。
電線を扱う方としては、髪の毛のように細い導線が何本も束になった「撚り線」の方が曲がりやすいので楽ですが、信号の減衰の面から言うと、表面積を多くするにはなるべく太い導線「単線」を1本、デン、と据えた方が有利です。要するに、単線の方が扱いづらいが、高い周波数でも信号の減衰が少ない、すなわち高速なデータを遠くまで伝送できる、ということです。
ですから、普段、手で移動させたりして扱うようなケーブルには向きませんが、一度引いたら動かさない壁内や天井裏のLAN配線には単線が使われるわけです。なお、カテゴリ6のみでなく、カテゴリ5eにも単線仕様のケーブルはあります。
次に、UTPとSTPについて。
まず、STPというのは、Seilded Twist Pairの略で、ケーブルの4対のツイストペア全体を覆うようにアルミ箔などのシールド(遮蔽)がかかっているものを言います。このシールドは、中のツイストペアをノイズから守る役割を果たしますので、工場の中などノイズの多い環境でLANを引く場合に使われます。
一方、UTPはUnshielded Twist Pairの略で、STPのようなシールドがないケーブルを言います。通常、家庭内が、STPが必要になるほどノイズが多い環境であることはないので、一般的にはLANケーブルといえばこのUTPを使います。
STPはケーブルの直径が、シールドの分だけ太くなりますし、両端の機器でシールドを機器のグランドに落とさないと効果がないので、コネクタ自体もシールド極を持ったものを使う必要があります。このため、STPケーブルは自作が難しく、また既製品もUTPに比べるとかなり高価です。

5)カテゴリ6のLANケーブルは固くて配線しづらい?
カテゴリ6のケーブルは、ギガビットを通すため、ケーブル自体にさまざまな仕掛けが組み込まれています。
まずは、十字介在と呼ばれるセパレータです。カテゴリ5eもカテゴリ6も8本4対の銅線を組み合わせてできているものですが、この4対の撚り線がそれぞれケーブルの中で近づき過ぎてノイズを誘導しないように、あるいは、位置がばらばらにならないよう、仕切りを入れているのがこの十字介在の役目です。カテゴリ6でも無いものもあります。これが入っている分、ケーブルが太くなっています。
次に、銅線が「単線」仕様です。単線の他に、「撚り線」(「単線」と「撚り線」については、こちらを参照)仕様もありますが、単線よりも高い周波数が通りにくいため、カテゴリ6のバルクケーブルではほとんどが単線仕様です。単線は曲がりにくいため、ケーブルが硬くなるのです。
また、カテゴリ5eとカテゴリ6の芯線の「撚りピッチ」を比べると、カテゴリ6の方がピッチが細かくなっています。ピッチが細かければ、ケーブルとしては曲げにくくなります。
では、本当にカテゴリ6は配線しづらいのでしょうか? 私が工事した感触から言うと、曲がりがきつくなる部分では確かにやりづらく、注意が必要ですが、CD管の中を通線する時などは、そのがっちりとした手応えから力を掛けやすく、全身の力を込めて引いても、ケーブルが切れる心配がないので、安心して作業できた気がします。
カテゴリ5eの柔軟性に慣れているとちょっとてこずるかもしれませんが、私が扱ったことのあるケーブルといえば、無線の同軸ケーブルや電気工事のVVFケーブルなど、LANケーブルよりははるかに硬いものばかりなので、気にならないだけかもしれません。

5)長く引くと速度は落ちる?
ケーブルやコネクタが、規格を満足している限り、規定された長さ(100m)までならいくら長く引いても速度は落ちません。
但し、現実の環境では途中にノイズ源があったり、ケーブルが折れ曲がったりすることもあるので、このような場合は速度が低下する可能性があります。
最近では、ドアの隙間でも引けるようにと、撚っていない細径のケーブル(「きしめん」ケーブルとはよく言ったもの)も売られているようですが、これらは「カテゴリ6対応」として売られていますが、ケーブル自体の規格は満足していないものと思われます。このようなケーブルはコネクタ付きで販売されているため、元々速度が問題になるような長尺の物は存在しませんが、もしこの手のケーブルだけを買ってきて、コネクタを自分で付けることができるなら、長くすればするほど速度は低下するでしょう。

6)ACラインと近づけると速度は落ちる?
実験したことはありませんが、カテゴリ6の場合はかなりシビアなようです。例えば、松下電工の「ぐっとす6」の埋込みモジュラーの外箱にはこう書かれています。「1000BASE-T伝送の配線は電力配線と15cm以上の離隔距離を設けてください。伝送不良が発生する原因になります。」
この書き方からすると、AC配線からは2〜30cmは離した方がよさそうですが、これも程度の問題で、現実には壁の中や天井裏でAC配線が這い回っているところを、これだけの距離を常にあけてLANケーブルを配線することはほとんど不可能です。新築なら配慮してもらうことも可能でしょうが、既存の住宅ではまず無理です。以下に書くような機器が繋がるコンセントを避けるように引廻すしかありません。
ACラインに何が繋がっているかも問題です。常時動作していてインバータが繋がっていて四六時中ノイズを撒き散らしているもの、なんて家庭にはそうそうありません。エアコンや洗濯機、冷蔵庫・電子レンジは動作しているときだけノイズが出ます。これらが動作していない時に、速度が正常に戻るなら、配線時にそれらに至るAC配線を避けるようにすれば良いと思います。
また、埋込み配線工法の所にも書きましたが、即座に通信が不可能になってしまうわけではありませんから、既存の住戸という制約下では、AC系との平行配線を極力避ける、という妥協策しかないのではないか、と思います。

(以上、Webで検索してその一部をLAN配線される方の参考に載せました)

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